生活習慣病である脳卒中の予防法をいくつか挙げてみたので、ぜひ参考にしてみましょう。

1)脳卒中になる人の数は高血圧治療中、正常血圧が多い!

 高血圧は脳卒中の最大の危険因子であり、血圧の高いほうが脳卒中を発症し易いことを考えると、脳卒中になった人の多くは高血圧を治療しない人と思いがちです。しかし、秋田県ではその様な人は脳卒中発症者の13%しかいません。(図14)

 その理由は、すでに多くの人が高血圧治療を開始しているからです。たとえば、高血圧の全員が治療をしたとすれば未治療者からの脳卒中発症はゼロになる事を考えれば、高血圧未治療者の数が少ない現象が理解できると思います。これまで脳卒中を減らす方法として、検診などを介して高血圧の人を早期発見して早期治療をおこなうことに予防の大部分を費やしてきましたが、その効果が限界に達しつつあることを示しています。
 
2)いま必要な予防対策とは?

 これからの脳卒中予防対策は、病気か否かに関わりなく全ての人を対象として、喫煙、飲酒、肥満、運動不足、食習慣など地域に存在する脳卒中危険因子を排除しながら積極的な健康増進を目的とする考えが必要です。この方法は個人の生活習慣を改めるばかりでなく公共施設の分煙化、酒類やタバコの販売規制、スポーツ振興など環境に対する対策も含みます。このような考えを大胆に取り入れることで脳卒中による被害をさらに減少させるばかりでなく、高齢社会で活動性の優れた老人の割合を多くすることが可能となります。

3)血圧値で5歳若くなるには!

 集団検診の血圧値の平均を年齢ごとに並べると、10歳高齢になると血圧の平均値が6mmHg高くなることがわかります。(図15)

 さらに、飲酒習慣や肥満は血圧値を10歳分高くします。血圧値は飲酒、肥満、運動不足、食習慣などの危険因子を改善することで下がることが期待されます。平均的な血圧低下は図16の期待される血圧の低下の欄で示す程度であると推測されています。地域健診で得た集団内の危険因子を有する人の割合を参考に集団全体の血圧低下を試算したものが左に書き出してあります。集団の合計では約3mmHgの低下になります。すなわち、集団全体の血圧3mmHg低下のためには、喫煙者の25%が禁煙に成功し、日本酒を1合節酒することに飲酒者の30%が応じ、肥満ぎみの人の30%が3kgの減量に成功し、集団の80%と想定した運動不足の人の10%が新たに運動(30分間の早歩きなど)を積極的におこない、30%の人が新たに食事の改善(食塩7グラム以下、野菜類を現在の2倍量食べるなど)に成功することが必要です。


 脳卒中の発症率を5歳若い発症率に置き換えて秋田県の脳卒中発症者数を計算すると、元の発症者数より15%減少します。脳卒中発症と寝たきりの人をおおよそ15%減らすためには、いろいろな組み合わせで血圧を上昇させる習慣を持つ個人に合わせて指導をおこない、少なくても集団全体の血圧を3mmHg低下させることが必要となります。


脳アラカルテ 

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